人革速報

新人間革命での池田先生のご指導に学ぶブログです。

新人間革命 雌伏(32)|2017年5月1日

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 青年たちは、真剣な眼差しで山本伸一を見つめ、言葉を待った。
 「今日は、将来のために、広宣流布をめざすうえでの、最第一の鉄則とは何かを、あえて言い残しておきます。
 それは、金剛不壊の異体同心の団結です。
 大聖人は、こう仰せになっている。
 『総じて日蓮が弟子檀那等・自他彼此の心なく水魚の思を成して異体同心にして南無妙法蓮華経と唱え奉る処を生死一大事の血脈とは云うなり、然も今日蓮が弘通する処の所詮是なり、若し然らば広宣流布の大願も叶うべき者か』(御書一三三七ページ)
 ここには、すべての日蓮大聖人の弟子・檀那ら、つまり、広宣流布に生きる私どもが拝すべき根本指針が述べられています。
 まず、『自他彼此の心なく』、すなわち自分と他人、あれとこれとを分け隔て、差別する心を排していきなさいと言われている。
 人間には、国家、民族、文化・習慣、また、社会的な地位や立場、年代、出自、さらには、ものの見方、感じ方など、さまざまな違いがあります。そうした、いっさいの差異にとらわれることなく、共に同志である、等しく地涌の菩薩であるとの原点に、常に立ち返っていかなくてはならない。
 また、『水魚の思を成して』と言われているように、同志は皆、親密な、切っても切れない関係にあることを自覚し、各人が互いに尊重し合い、守り合っていくことです。
 したがって、“あの幹部は好きになれないから、組織にはつきたくない。活動もしたくない”というのは、この御金言に反します。また、それは、自分のわがままに負けてしまっている姿です。
 今、共に信心に励んでいるのは、決して偶然ではない。過去遠遠劫からの深い縁に結ばれ、一緒に久遠の誓いを果たすために末法濁世に出現したんです。
 その縁のうえに今があることを、同志が互いに自覚するならば、強い絆が育まれ、広宣流布への大きな前進の力が生まれます」

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新人間革命 雌伏(31)|2017年4月29日

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 山本伸一は、言葉をついだ。
 「意見というのは、人の数だけあるといっても過言ではない。ましてや世代などが違えば、意見は異なって当然です。
 座談会のもち方一つでも、平日の夜がいいという人もいれば、土曜や日曜の夜がいいという人もいる。日曜の昼がいいという人も、平日の昼がいいという人もいる。でも、どれかに決めなければならないので、より多くの人が都合のよい日を選ぶことになる。
 そして、皆で協議して決まったことに対しては、自分の希望通りではなくとも、心を合わせ、成功するように最大の努力を払っていくことが大事です。
 また、座談会を運営していく側の人は、参加できないメンバーのことを考慮して、別の日に、小さな単位での語らいの場をもつとか、たまには曜日を変えてみるとか、皆が平等に、喜々として信心に励めるように工夫をしていくことが必要です。
 そのほかの活動の進め方や運動の在り方についても、いろいろな意見があるでしょう。活動の方法に、“絶対”や“完璧”ということはありません。メリットもあれば、なんらかのデメリットもあるものです。したがって、問題点があったら、皆で知恵を出し合って、それをフォローする方法を考えていくんです。柔軟に、大きな心で、互いに力を合わせていくことが大切です」
 青年たちは、大きく頷きながら話を聞いていた。伸一は、一人ひとりに視線を注ぎ、力を込めて語っていった。
 「活動を進めるうえで、いちばん心しなければならないのは、自分の意見が受け入れられないことで、失望感をいだいたり、感情的になって人を恨んだりしてしまうことです。それは、自分の信心を破るだけでなく、広宣流布を破壊する働きになっていく。
 どの団体や宗教も、多くは運動上の意見、方法論の違いから対立や憎悪を生み、分裂しています。学会は、断じて、そんな轍を踏むようなことがあってはならない!」

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新人間革命 雌伏(30)|2017年4月28日

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 青年たちは、真剣な顔で、山本伸一の話に耳を澄ましていた。
 「青年幹部の側は、先輩の壮年や婦人の幹部に賛成してもらうためには、まず、説得力を培っていくことです。
 それには“なぜ、それが大事なのか”を、明快に、理路整然と説明できなくてはならない。また、その根拠を示すことが大切です。具体的なデータや実例を挙げることもいいでしょう。道理に適った話であれば、誰もが納得せざるを得ない。日蓮大聖人は、『道理と申すは主に勝つ物なり』(御書一一六九ページ)と言われている。その説得力を最も磨いていけるのが折伏です。
 さらに、青年らしい、一途な情熱が大事です。後継の青年が、真剣に、一生懸命に新しい挑戦を開始したいと力説している。その心意気に触れれば、応援したいなと思うのが人情です。結局、人の魂を揺り動かした時に、事態は大きく進展するんです。
 そして、実績を積むことです。青年たちの企画・提案は斬新であり、常に新しい波動を起こしてきたということになれば、皆が進んで意見を受け入れるようになるでしょう。つまり実証が信頼につながっていきます。
 それから、一度ぐらい、意見が受け入れられなかったからといって、すぐにあきらめたり、挫けたりしないことです。“本当に必要である。大事である”と思うなら、指摘された問題点を検討、改善し、何度でも案をぶつけていくことです。粘り強さが大事だよ」
 伸一の言葉は、自身の体験に裏づけられていた。彼は、一九五四年(昭和二十九年)三月、新設された青年部の室長に就任し、学会の運動の企画・運営を担うことになるが、当初、理事室は、提出した企画のほとんどに難色を示した。後の平和文化祭の淵源となった青年部体育大会に対しても、賛成しようとはしなかった。
 それが、回を重ねるにつれて皆が絶賛するようになり、やがて学会を象徴する催しとなったのである。青年の力の勝利であった。

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新人間革命 雌伏(29)|2017年4月27日

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 山本伸一は、来る日も来る日も、神奈川研修道場や新宿文化会館などで、各地や各部の代表らと懇談し、指導・激励を続けた。
 一部の週刊誌などは、相変わらず学会批判を続け、捏造、歪曲した報道も盛んであった。しかし、伸一は、悠然と、太陽が己の軌道を黙々と進むように、個人指導を重ねていった。励ました同志が、信心に奮い立ち、宿業の障壁に挑み、乗り越え、人生の凱歌を響かせる姿を見ることに勝る感動はない。
 伸一は、青年たちとも好んで懇談した。神奈川文化会館で数人の男子部、学生部の幹部らと語り合った折、彼は尋ねた。
 「学会は新出発して半年以上が経過したが、青年は元気かね」
 男子部の幹部が答えた。
 「はい。頑張っています。ただ、先生が会合で指導されることがなくなってしまい、皆、寂しい思いをしています」
 伸一は、すかさず言った。
 「そう感じたならば、青年が立ち上がるんです。そうでなければ、傍観者であり、主体者ではない。自分が一切を担おうと決めて、前進の原動力となっていくのが青年です」
 男子部の幹部が、困惑した顔で語った。
 「新しい活動などを提案しても、壮年の先輩たちは、なかなか賛成してくれません」
 伸一は、笑みを浮かべた。
 「青年が新しいものを企画し、先輩である壮年たちが反対する――多かれ、少なかれ、どの団体や社会でもあるものだ。
 年配者には、何事にせよ、豊富な経験がある。そこから導き出された経験的法則というものがあり、その尺度で物事を判断する。
 この経験則という裏づけがあるだけに、年配者の判断には間違いは少ない。しかし、自分が経験していない物事には否定的になりやすい。また、時代が大きく変化している場合には、経験則が役に立たなくなる。それが認識できないと、判断を誤ってしまう。
 壮年幹部の側は、その点を心して、青年の意見に、積極的に耳を傾けていくべきです」

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新人間革命 雌伏(28)|2017年4月26日

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 山本伸一は、十一月十六日の本部幹部会は学会創立四十九周年を記念する式典であるだけに、わずかな時間でも出席し、同志と共に新しい広宣流布のスタートを切りたかった。
 彼は、会合の途中で入場した。大多数の参加者が、久しぶりに伸一の姿を目にした。揺るがさんばかりの大拍手が場内を圧した。
 彼は、長い話をすることは自粛し、上着を脱ぎ、扇を手に壇上の中央に立った。
 「今日は、学会歌の指揮を執ります。『威風堂々の歌』にしよう!」
 会長辞任後、初めての伸一の指揮である。
 再び、雷鳴を思わせる大拍手がうねった。
 講演ばかりが指導・激励ではない。戦いは智慧である。工夫である。創造である。どんなに動きを封じられようが、広宣流布への不屈の一念があれば、前進の道が断たれることはない。伸一は、一曲の指揮で、皆の魂を奮い立たせようと、決意したのである。
 高らかに勇壮な調べが流れ、喜びに満ちあふれた躍動の手拍子がこだました。

 〽濁悪の此の世行く 学会の……

 彼は、まさに威風堂々と、大鷲のごとく、力強く舞った。
 “大東京よ、立ち上がれ! 全同志よ、立ち上がれ!”と心で叫びながら。
 頰を紅潮させ、大きく腕を広げ、力いっぱい手拍子を打つ壮年もいた。目を潤ませながら、声を限りに歌う婦人もいた。凜々しき瞳に闘魂をたぎらせる男子部も、歓喜に顔をほころばせて熱唱する女子部もいた。
 皆の息はピタリと合い、生命は一つにとけ合った。吹き荒れる嵐のなかで、この日、東京から、再び凱歌の行進が開始されたのだ。
 「仏法は勝負」である。ゆえに、広宣流布の戦いは、いかなる逆境が打ち続こうが、断固として勝つことを宿命づけられているのだ。
 広布の勝利王は、即人生の勝利王となり、幸せの勝利王となる。広布の峰を一つ一つ越えるたびに、幸の太陽は燦然と輝きを増す。

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新人間革命 雌伏(27)|2017年4月25日

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 十一月十六日、創価学会創立四十九周年を記念する本部幹部会が、東京・巣鴨の東京戸田記念講堂で開催された。
 講堂の立つ豊島区には、初代会長・牧口常三郎と第二代会長・戸田城聖が軍部政府の弾圧によって投獄された東京拘置所があった。牧口は、ここで殉難の生涯を終えたのだ。
 戸田記念講堂は、その場所にも近く、両先生の死身弘法の精神をとどめる創価の新法城として工事が進められ、この年の六月に完成したのである。しかし、山本伸一が会合に出て指導することは制約されており、彼は落成式への出席を控えた。
 そうしたなかでも、講堂のオープンに尽力してくれている方々を讃え、御礼を述べようと、式典の前日に講堂を訪れ、同志と語らい、励ましたのである。以来、折々に、ここに足を運んでは、地元・豊島区や隣接する北区の同志、全国各地から集って来たメンバーと懇談を重ねたのだ。
 伸一は、先師の殉難の地である豊島区から、東京勝利の広布の大波を起こそうと決意していた。戦い抜こうという一念があれば、いかなる状況にあろうが、戦うことはできる。鉄格子の中でさえ闘争の道はある。投獄された牧口は、取り調べの場にあっても、堂々と創価の正義を語り説いている。
 御聖訓には「大悪を(起)これば大善きたる」(御書一三〇〇ページ)と仰せである。初代会長の殉教という「大悪」が起こったがゆえに、広宣流布の大勝利という「大善」が必ず実現できる道が開かれたのだ。
 しかし、ただ傍観しているだけでは、事態を転じていくことはできない。断じて、「大悪」を「大善」に変えてみせるという、決意と確信と勇猛果敢なる実践が不可欠となる。まさに、人の一念、人の行動こそが、御書の仰せを現実のものとしていくのである。
 伸一は今、彼を封じ込め、仏意仏勅の広宣流布の団体である学会を崩壊させようとする策謀のなかで、必ず突破口を開こうと、懸命な戦いを開始していた。

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新人間革命 雌伏(26)|2017年4月24日

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 若い力が育てば、未来は希望に光り輝く。
 九月の創価大学の訪問で山本伸一は、試合を控えたラグビー部のメンバーや、野球部、卓球部の代表とも記念のカメラに納まった。
 十月には、創価大学の体育大会に臨み、閉会式であいさつした。社会にあって、あらゆることに対応していくために、学生時代に基本を徹して身につけていくよう、力を込めて訴えたのである。
 人生の価値創造のためには、崇高な使命を自覚することが大切である。そして、その使命を果たしていくには、基本をしっかりと修得していくことが不可欠であるからだ。
 さらに、東京創価小学校の運動会や、いもほり大会にも参加した。
 創価学園の寮を訪ね、寮生、下宿生との懇談も行った。ここでは、一人ひとりが「光る存在」になってほしいと語った。「光る存在」とは、人びとを励まし、希望、勇気を与える人のことである。
 また、十一月の二日には、創価大学の「創大祭」に、三日には、創価大学の卒業生の集いである「創友会」の総会に出席した。
 伸一には、“創価大学創価学園の出身者は、民衆の幸福、世界の平和の実現のために、必ず二十一世紀の大空に羽ばたいてくれるにちがいない”との大きな期待と強い確信があった。そのメンバーが、自らを磨き鍛え、大成長している姿を見ると、元気が出た。勇気が湧いた。
 「創友会」総会に集った一人が、声を弾ませて報告した。
 「先生。私たちは、確認し合いました。
 『もう創立者に決意を述べている時代は終わった。これからは、“実際に、こうしました。こうなりました”と、結果をもって集う実証の時代である。それが、弟子が立つということである』と」
 伸一の顔に笑みが浮かんだ。
 「そうか。嬉しいね。みんなが創立者の自覚で道を開いていくんだ。それが、わが創価教育の栄えある伝統なんだから」

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新人間革命 雌伏(25)|2017年4月22日

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 山本伸一は、創立者として創価大学創価高校・中学、東京創価小学校の諸行事等にも、極力、出席するように努めた。彼は、人生の最後の事業と定めた教育に、今こそ、最大の力を注ごうと決意していたのである。
 九月には、創大生や学園生の代表と一緒に、国立市梨園へ梨狩りにも行った。
 創価大学では、秋期スクーリングに参加していた通信教育部の学生たちと記念撮影もした。彼は、働き学ぶ通教生の大変さを痛感していた。自身も勤労学生であったからだ。
 伸一は、戦後、東洋商業(後の東洋高校)の夜学を出て、大世学院の夜学に進んだ。入学した翌年の一九四九年(昭和二十四年)一月から、戸田城聖が経営する出版社に勤務した。この年の秋、不況の煽りを受け、会社の経営が行き詰まり、残務整理に追われる日が続き、やがて夜学を断念する。戸田は伸一に万般の学問を授けるため、全精魂を注いで個人教授を行う。いわゆる「戸田大学」である。
 そして、伸一が会長に就任して六年ほど過ぎたころ、大世学院の後身となる富士短期大学(後の東京富士大学)から、卒業のためのリポートを提出してはどうかとの強い勧めがあった。彼は、教えを受けた大世学院の高田勇道院長に報いる意味からも、学校側の厚意に応えることにした。
 当時、伸一は、日本国内はもとより、欧米訪問など、東奔西走の日々であり、小説『人間革命』の執筆もあった。そのなかでリポート提出のための関係書籍を買い求め、移動の車中や、会合と会合のわずかな時間を縫うようにして学習に励み、「日本における産業資本の確立とその特質」(経済史)など、十のリポートを書き上げていった。
 したがって伸一には、通教生たちの苦闘が痛いほどわかるのである。それだけに断じて負けないでほしかった。最後まで挫けずに、卒業の栄冠を手にしてほしかったのである。
 「鉄は炎の中で鍛えられ、人は困難の中で鍛えられる」(注)とは、中央アジアの誇り高きカザフ民族の箴言である。

 小説『新・人間革命』の引用文献
 注 『カザフ民族の諺と慣用句』V・B・ザハーロフ、A・T・スマイロワ編訳、カチェヴニキ出版所(ロシア語)

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新人間革命 雌伏(24)|2017年4月21日

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 山本伸一の功労者宅を中心とした家庭訪問は続いた。「敬老の日」である九月十五日には、東京・狛江の草創の同志の家を訪ね、家族と和やかに懇談し、皆で記念のカメラに納まった。五月以来、既に三十軒目の家庭訪問となっていた。さらに、狛江文化会館を訪れ、居合わせた同志を激励した。
 狛江市では、五年前の九月、台風十六号によって多摩川の堤防が決壊し、民家十九棟が流されるという事故が起こった。伸一は、そのニュースが流れるや東京の幹部らと連絡を取るとともに、犠牲者がないよう懸命に祈りを捧げたことが忘れられなかった。
 狛江市も、隣接する調布市も、住宅地として開発が進み、人口は増加の一途をたどっているという。
 田園と新しい住宅が広がる風景を見ながら、伸一は、同行していたメンバーに語った。
 「第二東京は広宣流布の新舞台だ。ここも未来が楽しみだ。皆で力を合わせて、新しい歴史を創ってほしいね」
 広宣流布は前代未聞の大業であり、道なき道を開き進む労作業である。その道を切り開くには、人を頼むのではなく、皆が自発・能動の信心で、一人立つことである。自らが目標を定め、主体者となって取り組む活動には歓喜がある。
 また、日々、勇気を奮い起こして自分の殻を破り、新しい挑戦を重ねていくことだ。挑戦こそが、前進と成長の原動力となる。
 武蔵野を愛し、調布で晩年を過ごした文豪・武者小路実篤は、次の言葉を残している。
 「いかなる時でも自分は思ふ、
 もう一歩
 今が実に大事な時だ。
 もう一歩」(注)
 もう一歩――その粘り強い歩みの積み重ねが、自分を変え、地域を変え、社会を変える。
 伸一は、念願であった個人指導に、多くの時間を割き、同志と語り合えることが何よりも嬉しかった。その堅実な行動のなかにこそ、学会活動の最大の醍醐味があるからだ。

 小説『新・人間革命』の引用文献
 注 「もう一歩」(『武者小路實篤全集11』所収)小学館

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新人間革命 雌伏(23)|2017年4月20日

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 山本伸一は、長野の同志に対して、全精魂を注いで激励に次ぐ激励を重ね、八月二十八日、敢闘の九日間を過ごして東京へ戻った。
 この長野訪問は、長野広布の歩みのうえでも、創価学会の歴史のうえでも、時代を画する新しいスタートとなった。しかし、それが「聖教新聞」に大きく報道されることはなかった。功労者宅への訪問が、二面などに、わずかな行数で報じられたにすぎなかった。
 伸一は、翌年も、翌々年も長野研修道場を訪問し、ここから清新なる広布の波動を起こしていくことになる。
 同研修道場での研修は、年ごとに規模を大きくし、充実したものになっていった。
 中心幹部が集っての全国最高協議会をはじめ、各方面、各部の研修会、世界のメンバーの研修会などが活発に開催された。
 伸一も、メンバーの要請を受けて出席し、共に錬磨の汗を流した。そして、この研修会は、学会の新しき伝統行事となり、広布伸展の原動力となっていくのである。
 また、ここには、キルギスの著名な作家チンギス・アイトマートフや、米デラウェア大学のデイビッド・ノートン教授、米インタナショナル大学のデイル・ベセル教授、米ジョン・デューイ協会のジム・ガリソン会長とラリー・ヒックマン前会長、中国・華南師範大学の顔沢賢学長、インドのガンジー記念館のラダクリシュナン館長など、世界の識者も多数訪れ、平和・教育・文化交流の舞台となっていった。
 伸一が戸田城聖の精神と偉業を永遠に記し伝えることを誓った後継の天地・軽井沢は、新しき前進と創造の電源の地となったのだ。
 彼が一九九三年(平成五年)八月六日、小説『新・人間革命』を起稿したのも、長野研修道場であった。
 長野の同志は、この研修道場での伸一との出会いと共戦を、最高、最大の誇りとし、果敢に地域広布の大道を開いてきた。師子の誇りこそ、不撓不屈の闘魂となり、勇気の光源となる。そして、勝利の大力となる。

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