人革速報

新人間革命での池田先生のご指導に学ぶブログです。

新人間革命 雄飛(12)|2017年6月28日

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 二十八日の午後、宿舎の錦江飯店に戻った山本伸一のもとへ、復旦大学の蘇歩青学長が訪れた。伸一は、復旦大学へは一九七五年と七八年(昭和五十年と五十三年)に図書贈呈のために訪問しており、蘇学長とは旧知の間柄である。
 蘇歩青は著名な数学者であり、この日も数学や教育をめぐっての語らいとなった。そのなかで、「数学は難しいといわれるが、易しく教えることはできるか」との質問に対する学長の答えが、伸一の印象に残った。
 「何事も、『浅い』から『深い』へ、『小』から『大』へ、『易しいもの』から『難しいもの』へという過程があります。無理をさせずに、その一つ一つの段階を丹念に教え、習得させていくことで、可能になります」
 さらに学長は、力を込めて語った。
 「つまり、学ぶ者としては、一歩一歩、おろそかにせず、着実に学習していくことが大事です。そして、自分の最高の目標をめざして、歩み続けていくことです。しかし、そこに到達するまでには、“とうてい出来ない”と思うこともあるでしょう。まさに、この時が勝負なんです。そこで我慢し、忍耐強く、ある程度まで歩みを運んでいくと、開けていくものなんです。それは、『悟る』ということに通じるかもしれません」
 何かをめざして進む時には、必ず「壁」が生じる。そこからが、正念場であるといえよう。それは、自分自身との戦いとなる。あきらめ、妥協といった、わが心に巣くう弱さを打ち砕き、前へ、前へと進んでいってこそ、新たな状況が開かれるのだ。勝者とは、自らを制する人の異名である。
 伸一は蘇歩青と、その後も交流を重ね、二人の語らいは六回に及ぶことになる。
 八七年(同六十二年)六月、伸一は、復旦大学の名誉学長となっていた蘇歩青との友情と信義の証として、詩「平和の大河」を贈った。そこには、こうある。
 「大河も一滴の水より 平和の長江へ 我等 その一滴なりと ともどもに進みゆかなむ」