人革速報

新人間革命での池田先生のご指導に学ぶブログです。

新人間革命 雄飛(10)|2017年6月26日

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 同行した中日友好協会の孫平化副会長の話では、「漓江煙雨」といって、煙るような雨の漓江が、いちばん美しいという。だが、桂林の景観が醸し出す詩情に浸りながらも、話題は現実の国際情勢に及んでいた。
 前年末に、ソ連アフガニスタンに侵攻したことから、ソ連への非難の声が中国国内でも高まっていたのだ。そして、山本伸一ソ連へも友好訪問や要人との対話を重ねていることに対して、快く思わぬ人もいたのである。
 船上の語らいで、伸一は、こう言われた。
 「中国と日本に金の橋を架けたあなたがソ連に行けば、中日の関係は堅固なものになりません。行かないようにしてほしい」
 伸一は、率直な意見に感謝しながらも、同意することはできなかった。
 「皆さんのお気持ちはわかります。しかし、時代は大きく変化しています。二十一世紀を前に、全人類の平和へと、時代を向けていかなくてはなりません。大国が争い、憎み合っている時ではありません。
 “互いのよいところを引き出し合いながら調和していこう”“人間が共に助け合って、新しい時代をつくっていこう”――そういう人間主義こそが必要になってくるのではないでしょうか」
 彼は懸命に訴えたが、なかなか納得してもらうことはできなかった。すぐに、中国とソ連と、どっちが大事なのかといった話に戻ってしまうのである。
 漓江の風景は刻々と変わるが、やがては大海に注ぐ。同様に、時代は人類平和の大海原へと進む――そう伸一は確信していた。
 「私は中国を愛します。中国が大事です。同時に、人間を愛します。人類全体が大事なんです。ソ連の首脳からも、『絶対に中国は攻めない』との明言をもらい、お国の首脳に伝えました。両国が仲良くなってもらいたいのです。私の考えは、いつか必ずわかっていただけるでしょう」
 彼の率直な思いであり、信念であった。
 粘り強い行動こそが不可能を可能にする。