人革速報

新人間革命での池田先生のご指導に学ぶブログです。

新人間革命 雌伏(42)|2017年5月13日

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参加者が久しぶりに聞く、元気な山本伸一の声であった。皆、一心に耳を傾けていた。
 「皆さんの美しい演技の裏には、どれほど厳しい修業があり、根性と忍耐をもって技術を磨き、挫けずに前進してきたことか。人生もまた、美しい開花の裏には苦闘がある。
 今日の総会は、テーマに掲げたように、まさしく『二〇〇一年 大いなる希望の行進』の開幕でした。私も二〇〇一年へ、希望の行進を開始します。一緒に進みましょう!
 皆さんは、学会第二世、第三世であると思います。その若い皆さん方も、荒れ狂う人間世界の、厳しい現実の嵐のなかを進まねばならない。学業、仕事、人間関係、病気など、さまざまな課題や試練が待ち受けているでしょう。しかし、それを経て、すべてを勝ち越えてこそ、初めて二〇〇一年への希望の行進が成就することを知ってください。
 何があっても、今日のこの日を忘れず、この根性と忍耐とを思い起こし、全員が強い信心で、幸福輝く二十一世紀の峰を登り切っていただきたい。
 皆さんの幸せと人生の勝利を、祈りに祈って、本日の御礼のあいさつといたします」
 再び会場は大拍手に包まれた。
 伸一は、若き後継の世代が、二十一世紀の大空に向かって、はつらつと真っすぐに伸びていることを実感し、大きな喜びを覚えた。何ものにも勝る希望を得た思いがした。
 鼓笛隊総会は、歴史の大きな節目となった一九七九年(昭和五十四年)の有終の美を飾り、二十一世紀への新しい出発を告げるファンファーレとなったのである。
 激動と波瀾と新生の、劇のごとき一年が終わろうとしていた。大晦日、伸一は、静岡研修道場にいた。この静岡県で捕らえられた初代会長・牧口常三郎を偲びながら、自身の新しい大闘争が、始まろうとしていることを感じた。闇は未だ深かった。
 彼は、魯迅の言葉を思い起こしていた。
 「光明はかならずや訪れる。あたかも夜明けをさえぎることはできないように」(注)

 小説『新・人間革命』の引用文献
 注 「寸鉄」(『魯迅全集10』所収)伊藤虎丸訳、学習研究社 

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新人間革命 雌伏(41)|2017年5月12日

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今回の第三回鼓笛隊総会では、壮年・婦人・男子・女子部の合唱団が一体となって交響詩「民衆」を歌い上げた。まさに多様な民衆が力を合わせ、凱歌を轟かせていったのだ。
 山本伸一は、詩「民衆」に綴っている。
   
 科学も 哲学も
 芸術も 宗教も
 あらゆるものは
 民衆に赴くものでなければならない
   
 君のいない科学は冷酷――
 君のいない哲学は不毛――
 君のいない芸術は空虚――
 君のいない宗教は無慙――
    
 君を睥睨する者どもは
 脚下にするがよい……   
    
 伸一は、交響詩を聴きながら、学会が担っている使命の意味を、深く嚙み締めていた。
 “あらゆる権力の軛から、そして、宿命の鉄鎖から民衆を解放する――それが創価学会の使命だ! それがわれらの人間主義だ! 私は戦う! 断じて戦う! 民衆のため、広布のために。そして、何があっても民衆を守り抜き、民衆の時代を開いてみせる!”
 鼓笛隊総会はフィナーレとなった。メンバーが場内通路をパレードし、全出演者が舞台に上がり、「平和の天使」を大合唱する。
   
 〽平和の天使 鼓笛の同志よ……
   
 熱唱する乙女らの頰に感涙が光っていた。それは、清らかな青春の魂の結晶であった。
 伸一は、あいさつの要請を受けていた。彼も、メンバーの健気な努力と精進に、御礼と感謝の励ましの言葉をかけたかった。
 観客席でマイクを手にして立ち上がった。歓声と雷鳴のような拍手が起こった。
 「大変に美しく、立派な演技であり、見事な総会でした。感動いたしました!」

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新人間革命 雌伏(40)|2017年5月11日

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山本伸一は、女子部には虚栄に生きるのではなく、“民衆の子”であることを誇りとして、民衆の大地に根を張り、民衆と共に、民衆のために生き抜いてほしかった。そこにこそ現実があり、そこで築いた幸せこそが、幸福の実像であるからだ。
 彼は、その願いを込めて、女子部に詩「民衆」を贈ったのである。
 鼓笛隊は、前年の一九七八年(昭和五十三年)十月、東京・八王子の創価大学のグラウンドで第二回鼓笛隊総会を開催。ここで、初めて交響詩「民衆」が披露されたのである。この総会は、雨の中で行われた。
 女子部合唱団三千人の熱唱、群舞メンバー三千人の躍動、鼓笛隊アンサンブル百五十人による熱こもる演奏が繰り広げられた。
 雨は容赦なくたたきつける。合唱団も、奏者も楽器も濡れていく。グラウンドで踊る群舞メンバーの青、黄、ピンクの真新しいドレスの裾も泥水に染まる。しかし、その表情は晴れやかであり、誇らかであった。民衆の時代を創造しようという、はつらつとした気概にあふれていた。
 伸一も雨に打たれながら、演技を鑑賞した。彼のスーツはびっしょりと濡れていった。しかし、降りしきる雨をものともせぬ、乙女たちの真剣な姿を見ると、傘など差す気にはなれなかった。ただ、皆が風邪をひかないように心で唱題しながら、華麗にして力強い舞台を見守っていた。
 交響詩「民衆」が終わると、大拍手がグラウンドを圧し、雲を突き抜けるかのように天に舞った。その瞬間、雨があがった。太陽が顔を出したのだ。
 伸一は、この総会から、皆が、何があろうと断じて負けずに広宣流布の共戦の道を歩み通す心を学び取ってほしかった。そして、そこには、必ず希望の太陽が輝くことを生命に刻んでほしかった。その信強き女性の連帯こそが、民衆凱歌の幕を開く力となるからだ。
 以来一年余、彼は、この第三回鼓笛隊総会で再び交響詩「民衆」を聴いたのである。

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新人間革命 雌伏(39)|2017年5月10日

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それは、太陽のような輝きに満ちていた。
 さわやかな希望の笑顔があった。清らかな生命の光彩があった。誇らかな青春の躍動があった。
 鼓笛隊総会は、メンバーの練習の成果をいかんなく発揮する華麗なる祭典となった。
 プロローグでは、山本伸一が作詞した鼓笛隊愛唱歌「平和の天使」の軽快な調べに合わせ、ブルー、ピンクの旗を使ったフラッグ隊の巧みな演技が喝采を浴びた。
 第一部「世界の広場」では、フランスのロワールの古城やシャンゼリゼ通り、中国の天安門広場、アメリカ・ニューヨークの摩天楼、パリの凱旋門と、次々と背景が変わる舞台で、ドラムマーチやドリル演奏が、華やかに、力強く繰り広げられていく。愛らしいポンポン隊の演技には、微笑みが広がった。
 第二部「希望の行進」では、「『軽騎兵』序曲」「さえずる小鳥」の演奏のあと、交響詩「民衆」となった。
   
 〽水平線の彼方
  大いなる海原のうねりにも似た民衆……
   
 友情出演した壮年部「地涌合唱団」、婦人部「白ゆり合唱団」、男子部「しなの合唱団」、女子部「富士合唱団」が、荘重な調べに合わせて、見事に歌い上げていく。
 詩「民衆」は、一九七一年(昭和四十六年)九月、東京・墨田区日大講堂で行われた女子部幹部会を祝して山本伸一が贈った詩である。彼はこの詩で、本来、最も尊ぶべき民衆の歴史は、常に権力者によって蹂躙され、受難と窮乏の涙で綴られてきたことを訴え、沈黙と諦観と倦怠に決別し、民衆が主役の歴史を創ることを呼びかけたのだ。
   
 僕は生涯 君のために奔る
 一見 孤立して見えるとしても
 僕はいつも君のために
 ただ君のために挑戦しゆくことを
 唯一の 誇りある使命としたい

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新人間革命 雌伏(38)|2017年5月9日

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午後六時半、山本伸一は、荒川文化会館を出発し、鼓笛隊総会の会場である荒川区民会館へ向かった。
 車に乗る時、同行の幹部が言った。
 「ここから二百メートルほど行きますと隅田川です。川の向こうは足立区になります」
 「そうか、足立か。できることなら、足立にも行って、皆を励ましたいな。
 先日、足立の婦人から手紙をもらったんだよ。あれが、みんなの思いなんだろうな。
 ――先生が会長を辞任されてから、本当に寂しくて辛くて仕方なかった。そのうえ、週刊誌などが無責任な学会批判を重ねるので、友人たちもそれを真に受け、ああだ、こうだと言ってくる。悔しさで胸がいっぱいになる。でも、負けません。今こそ、学会の、先生の正義を叫び抜いていきます。
 こういう内容だった。この闘魂が、“不屈の王者・足立”の心意気なんです。私は感動しました。皆、歯を食いしばって、頑張り抜いている。本当に頭が下がる。皆さんには、断じて幸せになってほしい。そのための信心であり、学会活動だ。だから試練の時こそ自らを鼓舞し、広宣流布の庭で必ず勝利の花を咲かせ、見事な幸の果実を実らせてほしい。
 どうか、足立の皆さんに、『日々、お題目を送っています。自分に勝ってください。宿命に勝ってください。広布の戦いに勝ってください。そして、幸せの花薫る勝利の人生を!』と伝えてください」
 車中、伸一は、足立の同志たちを思い、真剣に心で題目を唱え続けた。
   
 「二〇〇一年 大いなる希望の行進」をテーマに掲げた第三回鼓笛隊総会の最終公演が、二十六日午後七時から、荒川区民会館で華やかに行われた。新世紀をめざす、この“平和の天使”たちの活動も、学会が進めている文化・教育の運動の一つである。
 山本伸一は、鼓笛隊から再三にわたり出席を要請されており、皆を元気づけることができればと、招きに応じたのである。

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新人間革命 雌伏(37)|2017年5月6日

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荒川文化会館に到着した山本伸一は、集っていた鼓笛隊のメンバーらと共に勤行し、鼓笛隊総会の成功、そして、鼓笛の乙女らの成長と幸せを願い、深い祈りを捧げた。
 また、荒川のメンバーの代表とも懇談し、活動の模様などに耳を傾けた。話題が一九五七年(昭和三十二年)八月の、伸一の荒川指導に及ぶと、彼は言った。
 「私は、あの闘争で、草創の同志と共に、あえて困難な課題に挑戦し、“勝利王・荒川”の歴史を創りました。この戦いによって、皆が“広宣流布の苦難の峰を乗り越えてこそ、大勝利の歓喜と感動が生まれ、崩れざる幸福境涯を築くことができる”との大確信を、深く生命に刻みました。
 あれから二十余年がたつ。今度は、皆さんがその伝統のうえに、さらに新しい勝利の歴史を創り、後輩たちに伝えていってください。
 広宣流布の勝利の伝統というのは、同じことを繰り返しているだけでは、守ることも創ることもできません。時代も、社会も、大きく変わっていくからです。常に創意工夫を重ね、新しい挑戦を続け、勝ち抜いていってこそ、それが伝統になるんです。つまり、伝えるべきは“戦う心”です」
 “戦う心”という精神の遺産は、話だけで受け継がれていくものではない。共に活動に励む実践のなかで生まれる魂の共感と触発によって、先輩から後輩へ、人から人へと、伝わり流れていくのである。
 伸一は、言葉をついだ。
 「今こそ、荒川の一人ひとりが、山本伸一となって敢闘してほしい。一つの区に、未来へと続く不敗、常勝の伝統ができれば、学会は永遠に栄えます。皆が、そこを模範として学んでいくからです。荒川には、その大使命があることを忘れないでください。
 私は今、自由に会合に出て、指導することもできません。こういう時だからこそ、皆さんに立ってほしい。すべてに勝って、学会は盤石であることを証明してほしいんです」
 決意に輝く同志の眼が凜々しかった。

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新人間革命 雌伏(36)|2017年5月5日

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同志の中へ、心の中へ――山本伸一は、日々、激励行を重ねていった。それは、創価の新しき大地を開くために、語らいの鍬を振るい続ける、魂の開墾作業でもあった。
 激動の一九七九年(昭和五十四年)は師走に入り、慌ただしい年の瀬を迎えた。
 十二月二十六日午後、伸一は、東京・荒川文化会館を訪問した。この日の夜、荒川区民会館で開催される第三回鼓笛隊総会に出席することになっており、それに先だって、文化会館に集合している鼓笛隊や、地元・荒川区の同志を励ましたかったのである。
 伸一の荒川への思いは、人一倍強かった。
 五七年(同三十二年)七月、彼が選挙違反という無実の容疑によって逮捕・勾留された大阪事件から一カ月後の八月、広布の開拓に東奔西走したのが荒川区であったからだ。
 横暴な牙を剝く“権力の魔性”と戦い、獄中闘争を展開した彼は、不当な権力に抗し得るものは、民衆の力の拡大と連帯しかないと、心の底から痛感していた。ゆえに、人情味豊かな下町の気質を受け継ぐこの荒川の地で、広宣流布の大いなる拡大の金字塔を打ち立てることを決意したのだ。
 彼は、一人ひとりに焦点を当て、一人を励ますことに徹した。全情熱、全精魂を注ぎ、一騎当千の勇者を次々と誕生させていった。
 荒川は小さな区である。しかし、そこでの団結の勝利は、全東京の大勝利の突破口となり、必ずや全国へ、全世界へと波動していく。
 伸一は、“荒川闘争”にあたって、ある目標を深く心に定めていた。それは、一週間ほどの活動であるが、区内の学会世帯の一割を超える拡大をすることであった。
 皆が、想像もできない激戦となるが、ここで勝つならば、その勝利は、誇らかな自信となり、各人が永遠に自らの生命を飾る栄光、福運の大勲章となろう。
 御聖訓には、「強敵を伏して始て力士をしる」(御書九五七ページ)と。伸一は荒川の同志には、困難を克服し、確固不動なる“東京の王者”の伝統を築いてほしかったのである。

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新人間革命 雌伏(35)|2017年5月4日

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山本伸一は、青年たちと、忌憚なく話し合えることが何よりも嬉しかった。
 伸一は、彼らに大きな期待を込めて語った。
 「青年には、学会の後継として、一切を担っていく重大な使命がある。
 ゆえに、戸田先生は、青年を本気で育てようと訓練された。とりわけ、私には人一倍厳しかった。大勢の前で、激しく叱咤されたこともあった。ほかの人の失敗でも、叱責されるのは常に私だった。特に、皆に対して、広宣流布に生きる師弟の道の峻厳さを教える時には、私を対告衆にされた。
 獅子がわが子を、あえて谷底に突き落とすような訓練でした。先生は私を、後継の師子に育てようとされたからです。
 私が、首脳の幹部を厳しく指導してきたのも、これから学会の全責任を背負っていく重要な立場だからです。
 最高幹部は、常に真剣勝負でなければならない。また、何があっても、必ず勝ち抜いていく強さが必要である。ますます成長して、立派な指導者に育ってほしい。だから私は、広布に生きる人生の師として、これからも厳しく言っていきます。それが慈悲です。
 師匠というのは、本当の弟子には厳しいものなんです。この年になって、戸田先生のお気持ちが、よくわかります。
 先生を知る人は多い。直接、指導を受けたという人もいる。しかし、先生に仕え抜き、その遺志を受け継いで、仰せ通りに広宣流布の道を開いてきたのは私だけです。したがって、あえて申し上げるけれども、学会のことも、先生の真実も、誰よりも私がいちばんよく知っている。その意味からも私は、世界の同志が、また、広宣流布のバトンを受け継ぐ後世の人たちが、創価の師弟の道をまっすぐに歩み通していけるように、小説『人間革命』を書き残しているんです。
 君たちは、常に、勇んで試練に身を置き、自らを磨き、鍛えてほしい。そして、どこまでも団結第一で、共に前へ、前へと進んで、二十一世紀の学会を創り上げていくんだよ」

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新人間革命 雌伏(34)|2017年5月3日

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青年たちは、山本伸一の言葉に大きく頷いた。質問した学生部の幹部が語り始めた。
 「確かに、“優秀で、すごいな”と思っていたのに、退転していった人を見てみると、自分中心でした。自己顕示欲が強く、皆と協調できず、先輩たちとも心を合わせていくことができませんでした。結局、傲慢であったのだと思います。また、そうした人のなかには、異性問題や金銭問題などで、周囲に迷惑をかけてきた人もいます」
 伸一は、鋭い洞察であると感じた。
 「君の言う通りだね。私もそのような事例を少なからず見てきました。本当に残念でならない。
 自分中心になると、御書や学会指導に立ち返ることも、異体同心を第一義にすることもなくなってしまう。つまり、本来、仏法者の基本である、自身を見詰め、内省するという姿勢が失われていく。
 また、自分の心が“師”となってしまうから、自身を制御できず、その結果、我欲に翻弄され、名聞名利に走ったり、自分勝手なことをしたりする。そして、皆に迷惑をかけ、さまざまな不祥事を引き起こす。だから、誰からも信用されなくなり、清浄な学会の組織にいられなくなる――これが退転・反逆していく共通の構図といえます。
 日蓮大聖人は、佐渡流罪のなかで、仏法を破る者は、外敵ではなく、『師子身中の虫』であり、『仏弟子』であると喝破されている。このことは、広宣流布を進めるうえで、絶対に忘れてはならない。そうした事態は、今後も起こるでしょう。その時に、決然と立って、悪と戦い抜くのが真の弟子です」
 やがて、学会支配を狙い、宗門僧と結託して暗躍していた悪徳弁護士らが仮面を脱ぎ、正体を明らかにしていくのである。
 第二代会長・戸田城聖は、「青年訓」のなかで、「同信退転の徒の屍を踏み越えて」(注)と記している。創価の同志の連帯とは、広布を誓願し、烈風に一人立つ、師子と師子とのスクラムである。

 小説『新・人間革命』の引用文献
 注 「青年訓」(『戸田城聖全集1』所収)聖教新聞社 

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新人間革命 雌伏(33)|2017年5月2日

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山本伸一の声に一段と熱がこもった。
 「次いで大聖人は、『異体同心にして』(御書一三三七ページ)と仰せです。『異体』とは、一人ひとりの個性や特質を尊重することであり、『同心』とは、広宣流布という同じ目的に向かい、心を一つにしていくことです。たとえば、城の石垣も、さまざまな形の石が、しっかりとかみ合い、支え合っているからこそ堅固なんです。
 異体同心は、最も強い団結をもたらすとともに、自身を最大に生かし、力を発揮していく原理でもあります。
 この異体同心の信心で、南無妙法蓮華経と唱えていくことを、『生死一大事の血脈』というのだと言われている。そこに、仏から衆生へと生命の最重要の法が伝わっていく。それが大聖人が弘通する肝要であると宣言されているんです。そして、その実践のなかに、広宣流布の大願成就もある。
 もしも、意見の違いなどによって感情的になり、怨嫉したりするようになれば、本末転倒です。何があろうが、“広宣流布のために心を合わせ、団結していこう”という一念で、異体同心の信心で進むことこそが私たちの鉄則です。いや、学会の永遠の“黄金則”です。
 さらに大聖人は、『日蓮が弟子の中に異体異心の者之有れば例せば城者として城を破るが如し』(同)と述べられている。
 最大の悪とは、内部から広宣流布をめざす異体同心の団結を攪乱、破壊することです。それは、広布の激戦を展開している渦中に、味方が自分たちの城に火を放ち、斬りかかってくるようなものだ。異体同心を破る者は、いかに自己正当化しようが、第六天の魔王の働きをなすものです」
 学生部の幹部の一人が口を開いた。
 「幹部として一生懸命に頑張って、信心を完結する先輩もいれば、退転し、敵対していった先輩もいました。その根本的な要因は、どこにあるのでしょうか」
 「結論からいえば、奥底の一念が、広布中心か、自分中心かということです」

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